「食欲は健康のバロメーター」と昔からいわれているように、「最近、ちょっと食欲がない」というと、「どこか具合悪いの?」と聞かれるほど、食欲は体調を表現する1つの指標として用いられています。しかし、「食欲がない」というだけで、すぐに病気ということもありません。

「食欲がない」という食欲不振の症状とともに疲労感、腹部症状、発熱などの症状があればまず病気を疑います。症状が急にでてくれば急性疾患を、徐々に現れれば慢性疾患を疑います。

食欲不振の原因

「食欲がない」という食欲不振の症状はいろいろな疾患の1つの症状としてみられますが、妊娠や睡眠不足、喫煙、飲酒など生活習慣などによっても起こります。

また、現在何かの病気で加療中であれば、症状を話し、その病気によるものか、ほかに病気があるのかを調べてもらいましょう。治療のために内服している薬物によって食欲不振が起こることもあります。

食欲不振で疑われる病気

一般的に「食欲がない」というと消化器疾患を考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。いろいろな疾患にみられます。

1.消化器疾患
急性・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、肝炎、肝硬変、肝がん、がん性・結核性腹膜炎などがあります。

2.熱性疾患
肺炎、尿路感染症など感染性疾患では発熱により食欲が低下します。

3.内分泌・代謝疾患
糖尿病、尿毒症、高がリウム血症などがあります。

4.脳神経・精神疾患
脳腫瘍、脳出血・脳梗塞などの脳血管障害。うつ病や若い女性に多い神経性食欲不振症などがあります。

5.薬剤によるもの
ジギタリス中毒や抗生物質、消炎鎮痛薬、鉄剤、抗パーキンソン薬などの薬剤の服用により起こることがあります。

6.その他
ストレス、過度の疲労などにより食欲不振になることがあります。

食欲不振に関する主な病気・疾患

食欲不振に関連性の高い消化器疾患について説明します。

1.急性・慢性胃炎
急性胃炎は暴飲暴食やストレス、消炎鎮痛薬や抗生物質など薬剤などにより急激に発症します。通常みぞおちの痛み、胃のもたれ感、嘔気を伴います。

また、サバやイカなどの新鮮な刺身を食べたとき、アニサキスという寄生虫により発症することもあります。

慢性胃炎は胃粘膜の慢性的炎症で、胃運動の低下などが原因で食欲不振の症状がみられます。

2.胃・十二指腸潰瘍
原因・症状は急性胃炎とほぼ同じですが、再発を繰り返すものはヘリコバクター・ピロリという細菌が関与していることが多いようです。この場合には除菌療法も行われます。

3.胃がん
胃がんだけではかなり進行しないと食欲不振という症状はみられません。早期の胃がんは胃炎などの症状で検査をしたときや健康診断でみつかるのがほとんどです。

早期の粘膜内がんでは内視鏡による粘膜切除術が積極的に行われていますが、進行がんでは外科的切除術、化学療法、放射線療法などが行われます。

4.肝炎
肝炎にはウイルス性肝炎(A型、B型、C型)、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎などがあります。A型肝炎は経口感染でA型肝炎ウイルスに汚染された食物、生水から感染します。

最近では衛生管理がよくなったために国内初発感染はごくまれにしかみられなくなり、ほとんどが東南アジアなど海外旅行での感染によるものです。

B型、C型肝炎は接触感染でB型、C型肝炎ウイルス感染者の血液によって感染します。急性期には黄症、倦怠感などとともに食欲不振の症状がみられますが、慢性期にはあまり症状がありません。

アルコール性肝炎は飲酒による肝障害です。1日量で日本酒2合、ビールなら大瓶2本以内なら肝硬変にはならないといわれていますが、飲みすぎにはくれぐれも注意してください。

5.肝硬変
肝炎の終末像で、いくら治療を行っても元の正常な肝組織や肝機能には戻りません。門脈(消化管から肝臓に流れる血液の通る血管)圧の克進や低たんぱく血症などにより食道静脈癖や腹水、浮腫などがみられます。末期になると肝不全を呈し肝性脳症などの症状が現れます。

6.肝がん
わが国の肝がんの約80%はC型肝炎ウイルスによる肝硬変から発症するものです。慢性肝炎、肝硬変の人はがんの早期発見のためにも定期的に腹部超音波、CTなど画像による検査が必要です。治療にはエタノール局注療法、ラジオ熱波凝固療法、がんの栄養血管を詰める塞栓法、化学療法、放射線療法などがあります。

食欲不振で病院に行く目安

腹痛や発熱など、食欲不振以外の症状を伴っている時。また食欲不振以外の症状がなくても1カ月近く食欲がない状態が続くときは病院で診察をしてもらいましょう。勿論、何か気になることがある場合はすぐに医師に相談しまそう。

【受診すべき診療科】
内科。精神症状のあるときには精神科を受診。